腹横筋について考察➀  歴史と機能と構造

こんにちは!

大阪の天王寺区上本町にあるパーソナルスタジオHappinessの中芝です。
最近よく知られるようになった体幹トレーニング。

体幹トレーニングと言っても様々な種類がありますがそちらに関しては昔書いた記事をご覧頂ければ…
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本日はそんな体幹を考えていく上で重要な筋肉である腹横筋について、科学的知見に基づき少しだけ語りたいと思います!!

 

腹横筋はどこにある??

これは図で見ると分かりやすいと思いますが…

(アプリヒューマン・アナトミー・アトラスより参照)

こんな感じで胸郭と骨盤の間に付いています。さらに詳しく見ていきましょう…

■起始 腸骨稜、胸腰筋膜、第7~12肋軟骨後面、鼡径靭帯
■停止 腹直筋鞘を介して白線
■支配神経 肋間神経、腸骨下腹神経、腸骨鼡径神経、陰部大腿神経(Th5~L2)
(肋骨にも、筋膜にも、靭帯にも付いているんですね~)

そんな腹横筋は、腹筋群の中でも一番深層にあり、その上に内腹斜筋や、腹直筋などが付いてます。
筋肉の走行が横になっているので、腹圧を高めたり、腰椎の安定性に(腰の安定)貢献しているとも言われています。

さらに細かく見ていくと、別の役割を果たしている可能性もあるのです。

腹横筋の役割

以前からの研究によって、腹横筋は上部、中部、下部の3つの領域があり、腹横筋上部では胸郭の安定、中部では腰椎の安定に寄与、下部では腹部内容物を支持し、仙腸関節を圧縮する力を生成する可能性がある事が示唆されていましたが、2005年に行われた腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋の局所形態の研究を見てみると…各領域で筋繊維の方向や厚さや長さの違っていたり、筋繊維を分割する隔壁が発見され(しかし萎縮や病理の兆候である可能性も考えられるそうです。)、これらの仮説を支持するための構造的な違いを示しました。

ここで分かりやすく、腹横筋の領域を分けた絵をかいてみたのですが…


(ほんと毎度毎度下手ですみません💦)

上部領域に肋骨軟骨に付いている部分、中部領域に胸腰筋膜(TLF)、下部領域に骨盤に付いている部分に分けられています。
ちなみにこの研究では26人の人体標本を解剖していますが、上部の筋繊維の方向は水平である繊維と、標本によっては10度以上傾き(方向は上斜めと下斜め両方)がある線維と別れたようです。中部と下部は下斜めの方向に配列し中部と比べて下部の角度は大きかったそうです。(内腹斜筋下部の繊維も同様に下斜めの方向の角度が大きく、これをみると腹横筋・内腹斜筋下部の筋繊維の活動が仙腸関節の圧縮や、動作中でも筋の等尺性のテンションを維持し、姿勢維持やカラダの支持にも関与する可能性は大きいですね。)

いろいろな研究から、腹横筋が姿勢の保持や体幹部の安定させる役割がある事は間違いないようです。

このような働きをしている腹横筋ですが、、、腹横筋自体はダイナミックな関節運動を起こす筋肉ではなく、例えば仰向けの状態で上体を起こしての腹筋運動では腹横筋の機能を向上する事はできません。

ではどのような運動を行えば、腹横筋の機能が向上して、また、カラダにとってどのような効果が期待できるのでしょうか?

さまざまな呼吸トレーニング

腹横筋で有名な代表トレーニングが…

ドローインとよばれる呼吸トレーニングです。
聞いたこともある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

この呼吸法は、息を吐きながらお腹を凹ませる(腹横筋はお腹を凹ませる動きに作用します)動きを行う事で腹横筋にアプローチできます。ドローインを用いたトレーニングで有名なのが俳優の美木良介さんが行っていたロングブレスダイエットとかですかね?

このドローインの基礎を気付いた方がオーストラリアの理学療法士であるポール・ホッジス(Paul Hodges)博士です。
1996年にホッジスさんとリチャードさんが行った研究では、腰痛歴のある人とない人では腹横筋のタイミングに差があり、身体を動かした時(この研究では腕を動かしています)に腰痛のある人は無い人と比べて遅くなるという発表がされました。

ただ、このタイミングが遅かったという言葉が一人歩きし、【腰痛のある人は腹横筋が弱い】【なので腰痛予防には腹横筋トレーニングが大切だ】という風に世の中に出回ってしまいました。研究を行った当の本人達は『遅かった』と言っただけです。

しかし、そんな中、姿勢制御や運動制御(止まっている時や、動いている時に適切な姿勢を確保するためのプロセスやメカニズムのことを指します)のためには腹横筋だけではなく、体幹周りの全ての筋肉を使った方がいいんじゃないの?という事が言われはじめます。

これをブレーシングといい、お腹を凹ますのではなく、腹横筋以外の体幹周り(内腹斜筋、外腹斜筋、多裂筋など)の筋肉も使ってお腹を膨らませる呼吸トレーニングで、実際ドローインとブレーシングを比べた研究では、ドローインと比べてブレーシングの方が腰椎の安定性の向上やIAP(腹腔内圧)が向上した報告があります。

これがきっかけで、何か重いものを持つときや、例えばフリーウェイトでスクワットをする時も、お腹は凹んでないよね?膨らんでるよね?特に運動する時やパフォーマンスを上げるためのトレーニングを行う時はブレーシングの方がいいよね?っ…という風になっていったのですが…

時間の経過とともに、いやいやお腹を凹ませる膨らませるというよりも…横隔膜や骨盤底筋の動きや胸郭と骨盤のポジションを確保して、IAPを適切に高めた方がいいのでは?という風に言われ始めます。

これだけを見ていると‥
腹横筋は体幹の安定性を考える上で重要な役割は果たしているけど、それは他の体幹筋も同じで共同で収縮させることが大切なんだ!
なので1つの筋肉に意識をむけるトレーニングは必要はない!!という声も聞こえてきそうですが…

 

確かにフリーウェイトやパフォーマンス向上のためのトレーニングを行う上で、ドローインを行う必要は無いですし、腹横筋や骨盤底筋などのインナーユニットは共同で動くため腹横筋をアイソレートできるかも疑問ですが…それでも意識をむけたトレーニングも場合によっては意味のあるものになると自分は考えています。

例えば腹横筋は呼気時に収縮しますが、しっかり息を吐ききれなければ、吸気時の横隔膜のドームが上がりきらずZOAを確保する事が難しくなります。
そうなると息を吸う時…横隔膜のドームは下がりきらずに適切なIAPは確保できず…体幹筋の共同的な動きも悪くなり…それが体幹の不安定性に直結して実際の動きに障害がでる可能性もあります。

例えば…

(本当に下手ですみません簡単ではありますが腹圧が安定するポジションを描いてみました)

上の赤く塗りつぶしている部分が肋骨の中にある横隔膜、下の上の赤く塗りつぶしている部分が骨盤底筋群だと思って頂ければ…
このように胸郭と骨盤のポジションが適切であると、息を吸う時に横隔膜が下がった時に高くなった腹圧を逃がさないように骨盤底筋や腹横筋・多裂筋など腹壁をつくる筋肉が抑え込むことでIAPを保つことができて、体幹の安定性が向上します。

しかしこのように…肋骨が拡がったり、反り腰が強くなった影響で、その部分についてる横隔膜や骨盤底筋群の位置関係が変化すると、横隔膜が真下に下がりきらずIAPを高めることが出来ません。

 

上述したように腹横筋は上部では胸郭の安定、中部では腰椎の安定性に寄与、下部では仙腸関節を圧縮する力を生成します。
この部分の機能不全は、呼吸や腰椎の不安定性に結び付くかもしれません。

つまりは腹横筋をただただ収縮させてお腹を凹ますことが重要ではなくて、腹横筋に意識を向ける事で体幹の各セグメント間の力の伝達をスムーズにし、直接的な動きに結びつける事が重要なのだと思います。

ただ絶対に意識を向けたトレーニングが必要といってるわけではありません!!個人差もありますし、あくまでも状況に応じて必要な人もいるんじゃないの?という話です。ブリージングもドローイングもIAPも全部が大切で、どれが悪いという事ではなく、何を選択するかはその人によるという事です。

そう考えればドローインもトレーニングには使えなくても、腰痛予防のためのコンディショニング、運動初心者の方などにも使いやすく意味のあるものになるのではないでしょうか?
また内蔵を支える役割も持っていることから、ぽっこりお腹の方はもしかしたらこの部分をトレーニングすると解消するかもしれませんよ~😊
(これ、実際にお客様でぽっこりお腹解消した人がいらっしゃいました!ただし個人差はあります…)

以上から腹横筋トレーニングは、間接的にカラダの動きの正確性や柔軟性の向上、体幹の安定性の向上の効果がある事が期待できると思っています。
(後ぽっこりお腹の解消も‥‥もしかしたら!!ww)

次回は腹横筋のエクササイズについてお話ししたいと思いますが少しだけエクササイズをご紹介したい思います。

腹横筋トレーニング

モデルは矢本トレーナーにお願いしました笑

➀座位でのドローイング


・椅子に座り背中を背もたれにつけます。
(※ボールを両足に挟んでますが挟まなくてもOKです。逆に挟み過ぎてしまうと別の筋群が動いてしまう可能性もあるんですが矢本TRの場合は少し挟んだ方が感じれるとの事だったのでこのポジションを取っています。)

・息を吐きながら、両手を使ってお腹を凹ませるように左右の腸骨を仙骨側に向かって押してください。吐き切ったらお腹を凹ませた状態を5秒間キープします。【同じ動作を10回程度行う】
※しっかりと息を吐ききるまで、お腹を凹ませるイメージを持ちながら行いましょう。

➁体幹回旋ドローイン
 
・両足を回転させながら、逆側の手を腸骨に触れさせ、もう片方の手はしっかりとホールドしてください。
※背中は背もたれにつけておきましょう。

・息を吐きながら、お腹を凹ますイメージで、腸骨に触れている手を仙骨側に向かって押していきます。吐き切ったらお腹を凹ませた状態を5秒間キープします。
・同じポジションをキープしたまま呼吸を10回程度行う。
※しっかりと息を吐ききりましょう!

・反対も同じようにおこないます!!

まとめ

➀腹横筋は上部では胸郭の安定、中部では腰椎の安定に寄与、下部では仙腸関節を圧縮する力を生成する可能性があり、体幹の安定性に多いに貢献する。

➁ドローインよりもブレーシングの方が、体幹の安定性が向上し、姿勢制御や運動制御に良い影響を与えるという事実がある。

➂しかし腹横筋トレーニングは間接的には、上記のような体幹の安定性に貢献し、他の体幹筋の動きを良くして、結果的に腰痛の改善やぽっこりお腹を解消する事が期待でき、何を選択するかは人による。

次回はエクササイズ中心にインスタライブにてお話ししていきたいと思います。

本日はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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【参考文献】
・Inefficient Muscular Stabilization of the Lumbar Spine Associated With Low Back Pain
A Motor Control Evaluation of Transversus Abdominis Hodges, Paul W. BPhty(Hons); Richardson, Carolyn A. PhD 1996
・Regional morphology of the transversus abdominis and
obliquus internus and externus abdominis muscles DM Urquhart, PJ Barker, PW Hodges,2005
・The response of the transverse abdominis and internal oblique muscles to different  posturesAM Ainscough-Potts, MC Morrissey, D Critchley 2006
・Differential activity of regions of transversus abdominis during trunk rotation DM Urquhart, PW Hodges 2005
・Quantification of Lumbar Stability by Using 2 Different Abdominal Activation Strategies
AXLER, CRAIG T.; McGILL, STUART M.2007
・Intra-abdominal Pressure and Trunk Muscular Activities during Abdominal Bracing and Hollowing・K Tayashiki, Y Takai, S Maeo, H Kanehisa2016
・Network of breathing. Multifunctional role of the diaphragm: a review Janusz Kocjan1、Mariusz Adamek1、Bożena Gzik-Zroska2、Damian Czyżewski1、Mateusz Rydel1 2017
・運動療法その前に!運動器の臨床解剖アトラス 監修 北村清一郎 馬場麻人 編集 工藤慎太郎

 
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